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日別アーカイブ: 2025年12月19日

ケイ・オーのよもやま話~part28~

皆さんこんにちは!
有限会社ケイ・オー工業、更新担当の中西です!

 

“職人の未来”

左官という仕事には、長い歴史があります。城郭や寺社、蔵、町家、数え切れない建築の壁や床に、左官の技術が使われてきました。一方で、現代の左官は「伝統だけ」を守る仕事ではありません。むしろ今、左官は新しい材料や新しい建築の要求に応えながら進化しています。

そして、建築業界全体で職人不足が叫ばれる中、左官の価値は相対的に高まっています。なぜなら左官は、規格化や省力化が進んでも、最後に“人の手”が必要になる領域が多いからです。今回は、左官工事業の魅力を「伝統」「市場」「技術」「仕事の伸びしろ」という観点から深掘りします。

1. 左官は“文化財を守る技術”であり、“現代建築を美しくする技術”でもある

左官の伝統技術は、今も文化財修理や古民家再生の現場で生きています。土壁、漆喰、聚楽、砂壁。材料の調合、下地の組み方、仕上げの手順。これらは書籍だけで完全に学べるものではなく、現場で手を動かしながら受け継がれてきた技術です。左官は、建築文化を維持する人でもあります。

一方で、現代建築においても左官は重要です。店舗や住宅の内装で、コンクリート調の左官仕上げや、マットな質感の壁、微細な陰影が出る仕上げが求められるケースが増えています。建築家やデザイナーが求めるのは、均一な工業製品の壁ではなく、素材の質感が感じられる壁です。そこに左官の技術が必要になります。

つまり左官は、古いものを守るだけでなく、新しい空間の表現を作る仕事でもあります。ここに、伝統と未来が交差する面白さがあります。

2. 左官が重宝される理由――“最後の仕上げ”は逃げられない

建築の現場では、工程が複雑に絡み合います。大工、設備、電気、内装、塗装。どの工程も大切ですが、左官は特に「最後に品質が現れる工程」になりやすい。壁や床の仕上げは、空間の印象を決める大きな要素だからです。

たとえば、同じ設計の店舗でも、壁の質感が違えば雰囲気は変わります。照明が当たったときの陰影、手で触れたときの感触、写真に写ったときの見え方。左官の仕上げが上手いと、空間は格段に“上質”に見えます。これは、設計や材料の良さだけでは補えない部分です。

そのため、左官の品質は「その現場の顔」になりやすい。ここが大きな魅力であり、同時に責任でもあります。けれど、責任がある仕事ほど、出来上がったときの満足感は大きい。左官は、建築の価値を最後に引き上げる仕事です。

3. 材料が進化している。左官の仕事は“学び続けるほど強くなる”

近年、左官材料は多様化しています。伝統的な漆喰や土壁に加え、樹脂系の左官材、コンクリート調の意匠材、耐水性や耐汚染性を高めた材料など、現場の要求に合わせて選べる選択肢が増えました。

材料が増えるということは、左官が扱える表現や性能も増えるということです。例えば、水回りに使える仕上げ、外壁に適した仕上げ、店舗で汚れが付きにくい仕上げなど、左官の領域は広がっています。

同時に、材料ごとに施工要領が違います。練り方、塗り厚、乾き、押さえのタイミング。これらを理解し、再現性を高められる職人は、市場で非常に強い存在になります。つまり左官は、学び続けるほど仕事の幅が広がり、単価も評価も上がりやすい職業です。

4. 左官は“提案できる職人”になれる。仕事が営業に変わる瞬間

左官の魅力は、技術だけに留まりません。経験を積むと、現場で「提案」ができるようになります。例えば、

・この下地なら、この材料は割れやすい
・この照明なら、仕上げはこうした方が陰影が出る
・この店舗の導線なら、汚れやすいから材料を変えた方が良い
・この壁は手が触れるから、質感をこうすると印象が良い

こうした提案は、施主や設計者にとって非常に価値があります。左官が単なる請負作業者ではなく、“空間づくりの相談相手”になる瞬間です。ここまで行くと、仕事は「依頼される」だけではなく「選ばれる」ようになります。左官の仕事は、技術が信用になり、信用が仕事を呼ぶ世界です。

5. 後継者不足の時代にこそ、左官は誇れる。価値が残り続ける

建築業界では職人不足が深刻化しています。左官も例外ではありません。しかし、だからこそ、左官の価値は上がっています。高度な技能が必要で、誰でもすぐに代替できない。さらに、意匠左官の需要は増え、良い職人は指名されやすい。こうした構造は、技能を磨いた人ほど強くなる世界です。

また、左官の仕事は建物に残ります。完成後に消える仕事ではない。自分の手で作った面が、何年も何十年も空間の表情として残り、そこに人の暮らしが積み重なる。これほど「残る実感」がある仕事は多くありません。

まとめ――左官は“伝統”でもあり“未来”でもある

左官工事業の魅力は、伝統技術を継承しながら、現代の建築表現を作り、空間の価値を決める仕事であることにあります。材料が増え、デザイン需要が高まり、職人不足が進む時代において、左官の技能は今後さらに評価されていくでしょう。

左官は、壁と床の仕上げを通じて、建築の完成度を最後に引き上げる。人の手が必要な領域が残る限り、左官はなくならない。そして、手仕事の価値が見直されるほど、左官の魅力は増していきます。