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月別アーカイブ: 2025年4月

ケイ・オーのよもやま話~part12~

皆さんこんにちは!
有限会社ケイ・オー工業の更新担当の中西です!

 

さて今回のよもやま話は

育成

ということで、今回は、左官工事業における人材育成と人手不足の背景と課題、そして未来への処方箋を、現場のリアルな視点から深く掘り下げてお届けします。

 

壁や床、天井など、建物の仕上げに欠かせない左官工事。
その仕事は、緻密な手仕事と熟練の技術に支えられています。

しかし今、業界では人手不足と技術継承の危機が深刻な問題となっています。

「若い人が入ってこない」
「教える時間も余裕もない」
「このままでは伝統技術が消えてしまう」


左官工事業が直面する“人手不足”の現状とは?


 職人の高齢化と若手の減少

  • 左官職人の平均年齢は50歳を超え、60代でも現役が多数

  • 20代の職人はごくわずかで、新規入職者が極端に少ない

10年後には技術者の半数以上が引退すると言われており、“技術空洞化”の危機が迫っています。


❷ 3K(きつい・汚い・危険)職種のイメージ

  • 手作業中心、天候の影響を受けやすい屋外作業

  • 長時間労働・体力仕事というイメージが強く、若者が敬遠しがち

「安くてキツい」「職人になっても将来が見えない」という先入観を持たれることが課題です。


❸ 技術が“見えにくい・評価されにくい”

  • 技能の良し悪しが分かりにくく、正当に評価されにくい風土

  • 昇給・昇格の明確な基準がない

  • 見て覚える“背中の教育”が主流で、若手がついていけない

 “感覚”だけに頼る教育では、人が育たない時代に入っています。


なぜ人が育たないのか?育成のボトルネックとは?


教える側に“教え方”のノウハウがない

  • ベテラン職人は技術が高くても「教えるのが苦手」な人が多い

  • 技能の“言語化”や“分解”ができないと、新人は理解できない

技術=暗黙知。それを形式知(言葉・動画・図解)にする努力が必要です。


新人に合った教育ステップが存在しない

  • 「最初からコテ持って塗れ」「現場で覚えろ」

  • 一人ひとりの理解度・適性に応じたステップ教育がない

成長が見えるカリキュラムがなければ、やる気も定着率も上がりません。


労働条件・将来性に魅力がないと感じられている

  • 社会保険未整備、日給月給、昇給不明確

  • 将来のキャリアパス(職長・親方・独立)への道筋が見えない

「一生続けられる仕事」と思える環境づくりが急務です。


人材育成でやるべき“5つのこと”


① 技術の“見える化”とスキルマップの導入

レベル スキル内容
Lv.1 材料名・道具の使い方を覚える
Lv.2 下地処理・養生ができる
Lv.3 小面積の左官仕上げができる
Lv.4 模様出し・複雑な仕上げも対応可能
Lv.5 現場管理・後輩指導ができる

成長の“見える化”があれば、やる気と評価が連動しやすくなります。


② 動画・写真・図解を活用した教材づくり

  • コテさばき・塗り方・養生の方法を動画やイラストで解説

  • 現場でスマホでも見られる“マニュアル”の整備

  • 作業工程ごとの「チェックリスト化」

若手には“感覚”より“視覚”。情報をデジタルで伝える時代です。


③ 若手を育てる「人」を育てる

  • 指導方法、伝え方、やる気を引き出すコツを学ぶ研修

  • 「怒る」のではなく「導く」スタンスが重要

  • 教育担当者に評価・手当・育成の責任感を与える

教えられる職人は、企業の未来をつくる職人です。


④ 女性・外国人も活躍できる現場づくり

  • 女性職人向けの軽量化道具・更衣スペース整備

  • 外国人技能実習生・特定技能者への母国語マニュアル・文化理解

多様な人材が安心して働ける環境整備が、人材確保のカギになります。


⑤ 将来が描けるキャリアパス制度の整備

  • 例:入社→職人見習い→中堅→職長→独立支援 or 管理職へ

  • 給与・資格・役職が明確な評価制度と連動

  • 各段階で必要な資格取得支援(左官技能士1・2級など)

将来の「見える化」は、若者にとって最強の安心材料です。


左官の仕事は“アナログの芸術”であり“建築の命”


左官は、機械化が難しい“手仕事の世界”。
コテ一つで仕上がりが変わる、技術と感性の職人技です。

だからこそ、この伝統と技術を「消えゆく技」ではなく、「誇れる技」に変える」ために、私たちが今すべきことがあります。

  • 現代に合った“育て方”をつくる

  • 働きやすい現場を整える

  • 左官の魅力を次世代に伝える

これらを現実的に積み重ねていけば、左官の未来は確実に明るくなると、私たちは信じています。


育てることは、業界全体の“未来への投資”


左官業は、職人技を受け継ぐ「技術産業」であり、同時に「人間産業」でもあります。
その未来を守るためには、“育てる文化”を現場に根づかせることが必要です。

スキルの見える化
教える力の育成
若手が安心して働ける環境
キャリアの道筋と収入の安定

これらを本気で取り組む企業こそが、
人材に選ばれ、時代に必要とされる左官業者へと進化していけるのです。

 

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ケイ・オーのよもやま話~part11~

皆さんこんにちは!
有限会社ケイ・オー工業の更新担当の中西です!

 

さて今回のよもやま話は

確認事項

ということで、左官工事における施工前の事前確認事項を10の視点から深く掘り下げて解説!

これを押さえることで、ムダな手直し・クレーム・工程の遅れを未然に防ぐことができます。

 

左官工事は、「下地づくり」と「仕上げ」の両面を担う重要な工種です。
しかし、その美観と品質を保つためには、実は施工前の準備=“事前確認”がすべてを左右すると言っても過言ではありません。


なぜ左官工事に「事前確認」が重要なのか?


左官は、仕上げの最終段階に位置する工種の一つ。
「最終だからこそ、全ての不備が表に出る」業種でもあります。

  • 下地の不陸(でこぼこ)

  • モルタルの乾燥ムラ

  • 他業種との工程干渉

  • 材料・仕上げの仕様違い

など、多くのトラブルが“準備不足”から生まれています。

左官工事の成功は、「事前の情報共有と確認」にかかっているのです。


左官工事の事前確認事項《10のチェックポイント》


① 仕上げ仕様・材料の確認

  • 仕上げ種別(モルタル・漆喰・ジョリパット・珪藻土など)

  • 模様・パターン・色番号・コテ押さえの種類(平滑・刷毛引きなど)

  • メーカー指定材料/配合比率の遵守

  • 塗厚、乾燥時間、施工回数の指示

設計図・仕上げ表・仕様書・サンプルとの照合が絶対条件です。


 ② 下地材の種類・状態確認

  • モルタル下地、ALCパネル、石膏ボード、ラス下地などの材質と施工精度

  • 不陸(でこぼこ)や欠損、ひび割れ、浮き、油分の有無

  • 接着不良が懸念される箇所へのプライマー処理指示

左官は「下地が9割」とも言われます。下地確認なしに美しい仕上げはあり得ません。


 ③ 防水・止水処理との取り合い確認

  • 外壁・水回り・バルコニーなど防水層との境界部の納まり

  • シーリング材の打設タイミング(先打ち or 後打ち)

  • 水切り、見切り材との重ね順・立ち上がり寸法の確認

「雨が入る左官」は構造的な欠陥につながります。防水との連携は重要です。


④ 他工種(設備・電気・建具)との納まり調整

  • 配管・コンセント・サッシなどの取り合い位置

  • スリーブやボックス周りの補修方法

  • 建具枠と左官の取り合い寸法、クリアランスの確認

左官の仕上げ厚を見込んでいないと、建具が納まらない/段差が出るなどの不具合が発生します。


⑤ 施工範囲・役物・入隅・出隅の確認

  • 出隅・入隅の角処理:メタルコーナー・コーナービートなどの使用有無

  • 見切り材・役物(アルミ見切り、樹脂ジョイント)の位置確認

  • 縦横の区切り方や目地の有無と位置

角の仕上がりは左官の“腕前”の見せどころでもあり、クレームになりやすい部分でもあります。


⑥ 天候と気温のチェック(特に外部施工)

  • 気温が5℃以下または35℃以上の場合の施工制限

  • 直射日光・強風・湿度などの施工影響の確認

  • 夏場の急乾燥/冬場の凍結対策(保湿養生、凍結防止剤使用)

天候によって仕上がり・ひび割れ・変色リスクが大きく変動します。慎重な判断が必要です。


 ⑦ 養生範囲と他業種の進行状況確認

  • サッシ、床、外構、設備器具などの養生範囲の明示と材質選定

  • クロス工事、塗装、建具、電気工事との工程調整

  • 乾燥時間中の他職方の立入り制限

 養生不足や工程干渉は仕上げ汚れ・欠損・再施工の大きな原因になります。


 ⑧ モルタル・材料の搬入・練り場の位置確認

  • セメント・砂・添加剤・仕上材の搬入ルートと保管場所

  • 練り場の確保、水源の有無、電源使用可否

  • 粉塵飛散・騒音への近隣配慮

作業環境の事前確認は、効率と安全と信頼を同時に守る基本です。


⑨ サンプル施工・立会確認の実施

  • 模様・色・パターンの実物サンプル施工を実施

  • 元請け・設計・施主による立会確認で承認を得る

  • 「思っていた色と違う」「模様がイメージと違う」といったトラブル回避に有効

サンプルの提出は左官工事における“品質の契約”とも言えます。


 ⑩ 安全管理・足場・作業動線の確認

  • 足場の設置状況(天端高さ、作業スペース、転落防止)

  • 外壁用足場の手摺・ネット・幅木の安全性

  • 材料運搬・作業動線の確保と危険予知(KY)

左官作業は高所や長時間作業も多いため、安全確認と事前指差呼称が欠かせません。


「仕上がりの美しさ」は「準備の確かさ」から生まれる


左官職人の技術力がいくら高くても、
下地が悪い、材料が間違っている、気象条件が合っていない──そんな状況では最高の仕上げは絶対にできません。

つまり、左官工事は「腕」だけでなく、「段取り」「確認」「情報共有」で決まるのです。

  • 設計図を読む

  • 他職方と調整する

  • 現場状況を先読みする

この積み重ねが、クレームゼロ・再施工ゼロの左官工事につながります。


左官工事は“確認力”で決まる

左官は「仕上げの華」と言われる一方、
その実態は「土台を読み、工程を見通し、人と連携する」職人の技術と段取りの結晶です。

材料の正確な理解
下地の徹底的な確認
他業種との協力体制

これらを確認し、記録し、共有してこそ、“美しく・丈夫で・長持ちする”左官仕上げが可能になるのです。

 

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