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日別アーカイブ: 2025年6月19日

ケイ・オーのよもやま話~part15~

皆さんこんにちは!
有限会社ケイ・オー工業、更新担当の中西です!

 

【壁に命を宿す職人技】

土壁や漆喰(しっくい)、モルタル――日本建築の美しい壁面には、「左官(さかん)」という職人の手仕事が生きています。左官工事は、単なる塗装やコンクリート仕上げとは異なり、「素材と道具、手の感覚によって壁を造り上げる技術」です。

左官工事の基本を理解するために必要な歴史、工程、素材、道具、現代的な価値までを深く解説していきます。


1. 左官工事とは何か?―基本の定義と役割

■ 定義

左官とは、建築物の内外壁・床・天井に塗り仕上げを行う職種・工事のこと。土・砂・石灰・セメントなどの材料を用い、手作業で塗り重ねる伝統的な工法です。

■ 主な役割

  • 下地の形成:構造材の上に均一な面を作る

  • 仕上げ:装飾性や防水性、耐久性を高める

  • 調湿・断熱・吸音効果:自然素材を生かした快適な空間づくり


2. 左官工事の歴史と社会的背景

■ 起源と伝統

  • 古代エジプトや中国にも類似技術があり、日本では飛鳥・奈良時代から発展

  • 江戸時代には、聚楽壁や漆喰壁など、豪華な左官装飾が発達

■ 大工との違いと連携

  • 大工が“骨格”を作り、左官が“肌”を整える

  • 両者の連携が、日本の木造建築美を支えてきた


3. 左官工事の代表的な工程と技術

■ 基本工程

  1. 下地処理:ラス張り、下塗り(荒壁、モルタル)

  2. 中塗り:面を整え、厚みを持たせる

  3. 仕上げ塗り:鏝(こて)で美観と機能を与える

■ 重要な技術要素

  • 鏝(こて)使いの正確さ

  • 素材の水分調整

  • 表面の“呼吸”を意識した仕上げ


4. 使用材料とその特徴

材料 特徴 主な用途
土(荒壁土・中塗り土) 呼吸性・断熱性に優れる 土壁、伝統建築
漆喰(消石灰) 白く美しい、強アルカリ性で抗菌性 城壁、蔵、室内壁
モルタル(セメント+砂) 強度が高く安価 外壁、下地、現代建築
珪藻土・プラスター 調湿性・施工性に優れる 内装の意匠壁

5. 左官道具と職人技の世界

■ 主な道具

  • 鏝(こて):塗り・押さえ・仕上げ用など多数

  • 撹拌機・スコップ・バケツ:材料調合用

  • 下地用ブラシ・メッシュ材

■ 道具は“職人の延長”

  • 鏝の“角”や“しなり”を感じ取る手の感覚

  • 使用年数や使い方で、道具も職人に合わせて育つ


6. 現代建築と左官の融合

■ 自然素材と調和するデザイン性

  • 珪藻土・漆喰を活かしたナチュラルで呼吸する空間

  • モルタル左官によるインダストリアル・モダンな内装

■ 若手・女性職人も増加中

  • “左官女子”やDIY左官のブーム

  • 3Dプリンターやロボットと連携した「デジタル左官」の可能性も


おわりに

左官工事は、単なる仕上げ作業ではなく、建物に“呼吸”と“表情”を与える重要な仕事です。歴史ある技術でありながら、現代建築とも親和性が高く、今なお進化を続けています。

一見地味に思えるこの仕事には、「素材を知り、人を思い、手を動かす」という、日本の職人文化の神髄が息づいています。

 

 

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